へーつぁんの自由研究日記

うだつのあがらない法曹の日常

改正刑事訴訟法-被疑者国選弁護人の対象事件が拡大されるのはいつから?

***結論だけ知りたい方向け***

結論からいうと,平成30年6月1日です。
これまでは,死刑、無期又は長期3年を超える懲役又は禁錮に当たる犯罪につき勾留されている被疑者について国選弁護人を付すことしかできませんでしたが、平成30年6月1日からは,勾留されている被疑者全ての被疑者について,国選弁護人を付することが可能となりました(一定の資力要件は必要です。)

***以下,雑談***

 

ふと平成30年の六法を見てみたら、被疑者国選弁護人を選任する対象事件の条文が変わっていた。これまでは、死刑・無期長期三年を超える事件が対象だったが、平成28年の改正により、司法取引が導入されるだけでなく、被疑者国選の対象が、勾留状が発せられた全ての事件になったということは知っていたので、いよいよ変わるのかぁと思った。

ところで、法律が改正された場合、いつから改正後の法律が適用されるようになるのだろうか。せっかくなので、改正刑事訴訟法を例にして、考えてみましょう。

まず、改正法を知らなければ話になりませんので、改正法に当たります。法務省のホームページを参照しましょう(http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji14_00103.html)。
これによれば、刑事訴訟法の一部を改正する法律が、平成28年5月24日に成立し、平成28年6月3日に公布されたことがわかります。

もっとも、公布されれば当然に施行されるわけではなく、改正法には、附則があり、そこにおいて、施行日が明らかにされています。全部を紹介することは面倒なので、国選弁護人の対象範囲に絞って検討しますが、刑事訴訟法の一部を改正する法律2条によって、現行の刑事訴訟法37条の2の「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件について」という文言が削除されています。これによって、被疑者国選の対象が広がったことがわかります(対象範囲の限定が削除されたわけです。)。その上で、改正附則1条4号は、刑事訴訟法の一部を改正する法律2条の規定については、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日を施行日としています。

したがって、被疑者国選弁護の対象の拡大は、平成30年6月3日までに制定されるであろう政令によって、その施行日が決められるということになるわけである。

政令をどうやって調べたら良いか?これはおそらく、官報を見るしかないのだろう…しかし,官報は毎日チェックするわけにはいかんので、結局は、ニュースとか,裁判所とかからの公表を待つことになるのでしょう。

とまぁ、そんなこんなで、普段あまり考えないであろう法律の改正についてでした。

***追記***

その後の調査で、平成30年3月22日付の官報の号外第58号で、改正附則1条4号関するものにつき,平成30年6月1日を施行日とする政令が出されていたことが判明しました。これにより,冒頭で述べたとおり,平成30年6月1日から被疑者国選対象事件が拡大されることになります。