へーつぁんの自由研究日記

うだつのあがらない法曹の日常

養子縁組の流れ~基本編~

【設例】

AB夫妻は,共働きの夫婦で子供1人を養育していた。ある日,Aの兄Cが過労により精神障害を発症してしまい,治療のため,子供D(2歳)に対する養育を充分にすることができなくなってしまった。AB夫妻は,Dのことを可愛そうに思い,Dを養子に迎え,AB夫妻で育てたいと考えている。AB夫妻はどのような手続を踏むことになるだろうか。

 

【検討】

こうした場面で活用を検討されるべきが,養子縁組である。養子については,養親の嫡出子としての身分を取得する(民法809条)。つまり,実の子と同じ権利義務を負うことになるわけである(身上監護権,相続権等)。

 

なお,養子縁組をした場合でも,実親との身分関係が解消されるわけではないため,例えば,実親の相続権はいまだ保持することになるし,実親は,子に対してはなお扶養義務を負うことになる(この例外が特別養子縁組であるが,ここでは割愛する。)。

 

ところで,夫婦が未成年者を養子とする場合には,夫婦共同で養子縁組をしなければならない(民法795条)。また,養子縁組は,合意によってされるものであるが,設例のような2歳の子に養子縁組をする意思能力があるはずがない。こうしたことを考慮され,養子となる者が15歳未満であるときは,その法定代理人が,養子となる者に代わって,縁組の承諾をすることができるとされる(民法797条)。さらに,未成年者を養子にする場合,家庭裁判所の許可を得なければならない(民法798条)。不当な目的で未成年者がやり取りされることを防止する趣旨である。

以上の規定からすると,AB夫妻は,Cに養子縁組をすることについて承諾をする旨の書面を書いてもらった上で,家庭裁判所に対して,AB共同で養子縁組の許可の申立てをすることになる(例に従って,その書式は裁判所HPに掲載されているので,それに記載すればよい。その他戸籍等が必要になし,どこの裁判所に申し立てるかという問題もあるが,裁判所HPを参照。)。

 

裁判所は,申立書を審査した後,通常は,家庭裁判所調査官という心理学等の知見がある専門職に対して,調査を命ずる。職権主義の表れである。家庭裁判所調査官は,子供,実父母,養子縁組を申立てた者に対して面会等をして調査をし,調査報告書を作成する(家事事件手続法161条3項参照)。その上で,裁判官が,子の福祉の観点から問題がないかを審査し,問題がなければ,許可の審判をする,という流れになる。

 

その上で,ABは,市役所などに行って,養子縁組の届出をする,という流れになる。

関連していろんな論点はあるが,今回は基本編。