へーつぁんの自由研究日記

うだつのあがらない法曹の日常

妻の連れ子を妻と共同で養子縁組した後,妻と離婚,子と離縁したのに,子が未だ戸籍に入ったままなのはなぜ?

本務ではないが,戸籍について少し調べたので備忘録をば。

 

【事例】

田中Aは,父親のしれない子Bを出産し,田中Aは,新戸籍を編成し,Bもその戸籍に入籍した。その後,田中Aは,佐藤Cと婚姻し,佐藤Aと氏を改めた。また,佐藤Aと佐藤Cは,共同でBを養子とした。そのため,Bは,佐藤Cの戸籍に入り,氏も佐藤Bとなった。

その後,佐藤Aは佐藤Cと離婚し,佐藤Aは田中Aへと氏を戻し,新たな戸籍を編成した。さらに,佐藤Cは,佐藤Bと離縁した。この場合,佐藤Cを田中Aの戸籍に入れるためには,どのような手続きが必要か。

 

【検討】

まず,佐藤Cは,もともと田中Aの子であったから,田中Aが佐藤Bと離婚し,さらに,佐藤Bとも離縁したのだから,当然に,田中Aが編成した新戸籍に入籍する,というのが何となくの感覚ではないだろうか。

 

しかし,実はそうではない。民法816条1項は,次のとおり規定している。「養子は,離縁によって縁組前の氏に復する。ただし,配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は,この限りでない。」

 

上記事例でいうと,佐藤Aは,配偶者である佐藤Bと共に佐藤Cを養子としており,佐藤Aと離縁することなく,養親の一方である佐藤Bのみと離縁をしているから,ズバリ民法816条1項ただし書に当てはまる。そのため,佐藤Cは,佐藤Bと離縁をしたとしても,縁組前の氏に復することはない。したがって,佐藤Cは,引き続き佐藤Bの戸籍に入ることになる。全く血縁関係になく,養子でもないのに,引き続き戸籍に入り続けるというのは,違和感しかないが,この違和感は,やむを得ない(なぜやむを得ないかを知りたい人は,昭和62年に民法が改正されて816条1項ただし書が追加した理由を調べてみるとよい。)。

 

結局,佐藤Cが田中Bになるためには,家庭裁判所に行って氏の変更の許可を得る必要があることになる(民法791条1項)。まぁ,この手続自体は,家庭裁判所に行けば案内してもらえるので,心配をする必要はないが。

(参考文献:改訂 設題解説戸籍事務の処理Ⅳ243頁以下)