へーつぁんの自由研究日記

うだつのあがらない法曹の日常

感想ー自分の頭で考えて動く部下の育て方

キンドルアンリミテッドで見つけた本の感想を勝手に書いていくシリーズ。今回は,部下の育て方についていろいろ考えてみたい。自分は別に上司ではないが,将来は上司になる可能性があるし,それに部下の視点で見てみるのも面白いかと思い。

さて,部下の育て方を語る前に,そもそも理想の上司とはどのような人をいうのだろうか。全知全能の神のごとく,すべてを自らがこなすことができるというのは,実はそこまで望ましくない。なぜなら,完璧すぎるリーダーは,かえって部下の思考を止めてしまうからだ。リーダーが全てを指示し,それに反する行動に対して罰を与えてしまうと,部下は,当然,言われたことをやろうという気持ちになる。そうではなく,部下の行動をきちんと見て,適切に評価してあげることができるリーダーの方が,トータルのパフォーマンスを上げることができるのだろう。誰しも,自分を大切にしてくれるリーダーについていきたいと思うものだ。よく言われることだが,人は,承認欲求を持っている。部下の能力を認め,適切に評価されれば,部下の承認欲求も満たされ,部下のパフォーマンスを上げることができる。上司としては,部下に行動させ,失敗をしたとしてもそれを許容した上でフィードバックを与え,より自分の頭で考えてもらえるように行動すべきだ。「やってみせ,言って聞かせて,させてみて,ほめてやらねば人はうごかじ」だけではなく,さらに,「話し合い,耳を傾け,承認し,任せてやらねば,人は育たず」「やってみる,姿を感謝で見守って,信頼せねば,人は実らず」という段階まで実践することが必要なのである。

そうはいっても,部下としては,行動しろと言われても,どうしていいかなかなか分からないことも多い。慣れない仕事ならなおさらだ。こうした場合に,上司はどうするべきか。それは,人間の可能性を信じて,その人が答えにたどり着くまで辛抱強く待つことだ。答えを教えることは簡単だが,それでは,楽をすることになり,かえって自分の力にならないことがある。ロースクールでいう,ソクラティックメソッドの出番である。質問をされたら質問で返す。そうすれば,部下は嫌でも考えなければならなくなる。その結果,部下はどんどん成長していく。巷には,「アウトプット大全」という書籍もあるように,アウトプットが大事だと言われる。アウトプットの過程で,主体的に考えることができ,より知識が自分のものになる。なのに,上司・部下の関係になったら,途端に「アウトプット」の機会を平気で奪う上司がいる。とりあえず「させて」みてはいかがだろうか。それが,部下にとっての貴重な成長の機会になるはずである。

こうしてみると,上司と部下の関係は,「上司は会社員Lv.50,部下は会社員Lv.20」という関係ではないことが分かる。上司と部下は,そもそも仕事の内容が全然違うのである。むしろ,「上司は商人Lv.1,部下は戦士Lv.1」という整理の方が実はしっくりくるかもしれない(例えがいまいちだが。)。マウントを取ってくるような上司は,最もいまいちな人種の一つだ。

こうした部下の可能性を信じるという方法は,部下のやる気も増長させる。例えば,攻略本を片手にその内容に従ってやるゲームほどつまらないものはない。自分でいろいろと試してみて,失敗してみて,ようやく成功して,達成感を得られる。もちろん,どうしようもないときには,攻略サイトを見たりするが,それも目的意識があってみるものだから,より自分のものになる。部下の可能性を信じない上司は,部下に,攻略サイトを見ながらゲームをやれと言っているようなものだ。それでは部下は自分で発見するプロセスに触れる機会を奪われてしまう。

要するに,「自分の頭で考えて動く」部下を作るためには,「自分の頭で考えさせる訓練」が必要だということで,そのための方法としては,答えを与えるのではなく,質問をして考えさせる,ということだろう。

書いてある内容自体は,特段目新しいものではないが,そうであるからこそ,今一度その重要性を再確認したい。