へーつぁんの自由研究日記

うだつのあがらない法曹の日常

大麻の使用を禁止することは法制度としては当然

昨今,少年事件においても,大麻使用の事件がちらほらみられる。その少年らの意見としてたまにあるのが,「大麻の害はタバコやアルコールよりも低い。大麻は合法化されている国もある。規制する日本の制度がおかしい。」というものである。断片的な情報を集めて自己の行為を正当化しようとしているもので,困ったものである。

まず,大麻に含まれるTHCが体内でカンビノイドになり,脳に直接作用するわけで,大麻を使用した場合の薬効がある。いわゆるハイになるという状態である。こうした神経作用があるのにこれを一切規制しないという方がどうかしている。大麻は一部において合法化されている国もあるけど,合法化されている国でも,一定の規制の下に使用が認められているにすぎないし,そもそも,合法化されているのは「一部」であり,禁止されている国もいくらでもある。大麻の使用を禁止するのがおかしいというのは,一部の制度を過度に一般化するもので,論理の飛躍がある。医療用大麻もあるとかいうが,医療用大麻も規制の下に使用が認められているわけで,自由使用が認められているわけではなく,いわんや,少年たちがどこからともなく手に入れてきた大麻を自由に吸っていいなんていうことにはならない。

結局,「大麻を規制する必要はある。」という点について争いはほとんどなく,「それをどの程度規制するのか」という程度問題に争いがあるのである。日本は,その規制の程度を「使用を禁止する」というものを選んでいるのであり,その選択は,他の国もとっているもので,既に一定の合理性が推測されるし,神経に影響を及ぼす物質については,基本的に禁止し,一定の効用やその他使用につき必要性や許容性があるものを,規制の下で使用を許すという方向性は,法制度としては当然のものである。

 

大麻については,一部の大麻使用者を除いて,何らの必要性や許容性が認められていない以上,使用を禁止することについては何らの誤りはない。大麻の害の少なさについて,アメリカの研究を根拠に,タバコやアルコール,はたまたカフェインとかと比べたがるが,説得力はない。タバコやアルコール,カフェインは文化的背景に根差したもので,一定の有害性を有するとしても,使用につき必要性許容性は十分にある(煙草については今後無くなっていくかもしれないが。)。また,依存性が少ないとかいうけど,依存性が少ないことが規制しなくともよいという理由にはならないし(極端な例をいうと,青酸カリに依存性がないから規制しなくともよいということにはならない。),致死量に至ることがないというのも,死ななかったらいいものでもない。そもそも,規制されているにも関わらずここまで乱用が広がってしまうような物質を,規制しないという選択肢をとる方がどうかしている。また、アメリカの研究結果が正しいという前提もおかしい。数百年前までは天動説が通説であったような世の中である。20世紀後半の研究結果につきどこまで正しいと言い切れるだろうか。

 

大麻の薬効に着目し,その使用の必要性許容性を検討し,大麻の使用を禁止するという法制度は,十分正当であり,いかなる意味においても,法制度として,大麻の使用を認めることは,現在の日本ではあり得ない。だからこそ国会でも無視されるし,私も大麻使用を合法化すべきだという立場を相手にする必要はないと考えている。

 

なお,中にはTHCを規制すべきであり,「大麻」を規制するのはおかしいという立場もある。これは傾聴に値する見解のようにも思われるが,慎重に検討する必要はあるだろう。