へーつぁんの自由研究日記

うだつのあがらない法曹の日常

お金2.0の感想

今、経済がかわろうとしている。これまでの資本中心の資本主義から,資本より広い概念である価値を軸とする価値社会へとシフトしていく。

社会は、その時々の技術レベルを前提として、人間の経済的事情・社会的観点によって変化する。これまで、「貨幣」が経済的観点からはもっとも重要視され、いかにお金を稼ぐかが重要視されてきた。しかし、今、社会の経済的事情は、大きな変化に直面している。例えば、フィンテックなどがその例である。これまでの常識では考えられなかったようなシステムがどんどん作られており、例えば、ビットコインがその例である。今では常識となっている中央銀行が発行する紙幣という制度も、せいぜいここ100年ちょっとの間にようやく世界的に普及してきたものであるので、こうしたブロックチェーンを利用した制度というのが、今後覇権を握ったとしてもなんらおかしなことではない(現に、昨今の通信技術の進化はめざましい)。それぞれのシステムは、社会の流れに応じた「寿命」があるはずであり、「寿命」が来たら、次のシステムに移行するのが合理的である。

では、次のシステムとしてはどういったものが考えられるか。そのためには、持続的に成長するシステムのあり方を知っておくことが有益である。いくつかの要素があるが、報酬が明確であること、時間によって変化すること、成果が得られるかにつき不確実性があること、階層が可視化できること、参加者による交流の機会があること、である(Facebookを例に考えれば、それぞれの要素を具体的に理解できると思われる。あとは、パチンコとかゴルフを例にとっても説明できるだろう。)。こうした要素は、脳の機能とも整合的に理解することができる。もっとも、持続的に成長するシステムと言っても、いずれ寿命がきて、新しいシステムにとって変わられる。世界とは、こうした発展と衰退の繰り返しである。

さて、社会は、その時々の技術レベルを前提として変化すると述べたが、今現在の技術の変化はどう捉えられるのだろうか。キーワードは、「分散化」と「自動化」である。「自動化」はイメージがしやすい。AIである。他方、「分散化」について、これまでは、専門職、エージェントといった、特定の情報に詳しい人が権威を得てきたが、情報や技術に対するアクセスが容易になったことから、これからはますます個人が活躍する時代になることが予想される。例えば、YouTubeを例に取ると、放送会社を介することなく、個人による発信がどんどん増え、放送会社等を介在しない有名人などもどんどん生まれている。他にも、インスタグラム、Airbnb、UBERなど、エージェントを挟まない個々人のネットワークに着目した企業が、今急成長を遂げている。また、そもそも「お金」という概念を使用しない独立した経済圏も作られ始めている。LINEコインを例にして考えてみよう。今は、LINEコインは「お金」に紐づいているイメージがあるが、例えば、LINEのクリエイターにはLINEコインを報酬としてわたし、それを用いてLINE内の様々なサービスを利用するというフレームワークにすれば、LINE内で一つの経済圏が生まれることになる。

この「分散化」と「自動化」が揃うと、膨大なデータを利用して、独立下一つの経済圏を作ることが、今後可能になることが予想され、「経済圏」は「創造」の対象になる可能性が出てくる。経済圏は国家が形成するのではなく、経済圏が民主化する可能性がある生まれてくる(その結果、経済圏同士での競争ももちろん生ずることになる。)。

ところで、今の資本主義社会には、限界が見られると言われて久しい。本来は、株式市場は、その会社の事業に対して投資するというものだったはずだが、今や、会社の事業というよりは、投資してお金を増やすための場になっており、リーマンショックに代表されるように、実体経済と金融経済の乖離が生じている。実体経済の成長率を超えて、金融経済が成長し、足場が脆弱な舞台のように不安定な状態になってしまっている。こうした状況を踏まえると「お金」が持つ「交換価値」は絶対的なものではなく、「お金」でない何かに交換価値を持たせるという方法もありうるはずある。そして、そうすると、もはや重要なのは、「お金」ではなくお金をも含む様々な「価値」であるというパラダイムシフトが起こる。そうなると、例えば、企業価値を図るにあたって、財務諸表は必ずしも絶対的な指標にならず、「人材」や「データ」なども指標に含まれる可能性が生まれる。

これが、資本主義から価値主義への転換ということである。資本主義は、あくまで「価値」のうち、「お金」に転換しやすい有用性があるかという価値に着目していたが、今後は、個人や社会に対して訴えかける価値も重要になってくる(例えば、インフルエンサーという存在は、「お金」を持っていなくとも、すぐに「お金」に転換しうる大きな価値を持っている。)。こうした転換の結果、これまでのように「お金」を中心に据えなくても良くなり、結果、複数の経済圏が生まれ、そのどこの経済圏で生きるかを選択できるようになるかもしれない。

さて、価値主義という考え方を前提として、実は、今、多くの人が求めている価値がある。それは、「人生の意義」を持つことである。戦後と異なり、衣食住にそこまで苦労しなくなった今、日々の目標を持つことが難しくなってきている。つまり、物質的充足から、精神的充足に価値を置く流れが生じている。そうなると、これからは、他人に対して精神的充足を与えられるような人間がますます価値を持つことになる。精神的充足を与えるには、「他人を熱中させるだけの熱量を自分がもつ」、月並みな言葉で言い換えと、「自分の好きなことを楽しんで実行する姿を他人に見せる」ことがますます重要になってくると思われる。よく言われることだが、自分がとことん熱中できることを探して、それに打ち込むことによって、結果的に成功できると言えよう。こうして、今後は、自分の「価値」を上げるために何かを尽くしていくことが、ますます重要になってくると思われる。