へーつぁんの自由研究日記

うだつのあがらない法曹の日常

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する最高裁を読んでみた。

⚪︎ 事案の概要 Xは、性同一性障害であり、自らは女性であるとの確信がある男性である。制度上、性同一性障害の人については、性別変更の手続が認められているが、性別変更が認められるためには、法律上、原則として生殖器を除去する手術を受ける必要がある。…

同居の拒絶に対する法的な対抗手段

【事例】 XとYは夫婦である。ある日、xが家に帰ろうとすると、鍵が変えられており、yに聞くと、「あなたとの生活は無理なのでどこかへ行ってください」とのことだった。家の所有名義はxである。xとしては、yに対していかなる請求を成しうるだろうか。 【検討…

自己紹介をする

その人の人となりを端的に表すのが自己紹介。手短なものだが、その短時間のうちに、その人の印象のほとんどが決まる。 他方で、自己紹介の内容を考えるのは、そう容易なことではない。自分と真剣に向き合わないと、なかなか良い自己紹介というものはできない…

民法651条1項による解除

民法651条1項は、委任契約の任意解除を定める。委任契約は信頼関係に基づくもので、委任関係にありたくないと思ったのであれば、損害賠償義務の問題はおいておいて、契約を解除して契約の拘束力から解放される自由を認めましょうという制度である。 ところが…

間接損害(企業損害、反射損害)について

【事例】 Aは、B会社のプロジェクトリーダーであったところ、ある日、Cが運転する自動車にはねられ、3ヶ月の入院治療を要する重傷をおった。このため、B会社のプロジェクトは頓挫することになり、B会社は、見込まれていた1000万円の利益を受けることができな…

裁判官に関する書籍まとめ

単なる備忘録。裁判官の頭の中ってどんなものなのかを知るための材料。絶版も多く、図書館で探す必要ありそう。 裁判官出身者による書籍 原田國男「裁判の非情と人情」 井上薫 著者多数 大竹たかし「裁判官の書架」 石川義夫「思い出すまま」 岡口基一 著者…

債権法改正~約款について

【はじめに】 債権法改正には、大きく分けて3つのカテゴリーがある。すなわち、 判例法理の明確化 通説的な理解の明確化 実質的なルール変更 である。これらのうち、前二者については、これまで民法を勉強したことがある人であれば、過去の遺産である知識を…

弁論準備手続あれこれ

【はじめに】 民事訴訟と言えば、多数の傍聴人がかたずをのんで見守る中、公開の法廷に裁判官と当事者が集まって、事件について、口頭でアツい議論を進める…なんていうイメージを持っている人はさすがに多くはないかもしれない。 そこまではいかずとも、民事…

令和2年予備試験論文民事訴訟法をざっくり検討してみました

突然だが,予備試験ってどんなものなんだろう?と思ったので,予備試験の解説を勝手にやってみることにした。今回は,令和2年予備試験の民事訴訟法を検討していく。執筆時点では出題の趣旨がまだ出されていないので,以下の記載は私見に基づき勝手な意見を…

当事者の確定ー氏名冒用訴訟ー

今回は,ちょっとした夏休みの自由研究ということで、氏名冒用訴訟についてみていこう。 通常,民事訴訟では,当事者が誰になるかが問題になることはほとんどないため,氏名冒用訴訟は限界事例であるが,考え方を理解しておくことは重要である。 氏名冒用訴…

従業員が不法行為の被害者に対して損害賠償を支払った場合,従業員は,会社に対して一部補償を求めることができるか

最高裁令和2年2月28日第二小法廷判決 【事案】X 貨物運送業の会社Y Xの社員(トラック運転手) Yが,配送業務作業中,不注意によりAをはねてしまい,死亡させてしまった。Aの相続人であるBは,Xに対して使用者責任に基づく損害賠償請求訴訟を提起し,Xは…

「伝え方が9割」から学んだこと

だらだら本を読んでも自分のものにはならない,ということで,本を読んで学んだことをメモに残すシリーズ。今回は,伝え方が9割という本。 冒頭の例を読んで,この本に興味が沸いた。すなわち,こちらに興味がない人をデートに誘いたいときに,「デートして…

成年後見人が気に入らない!変更ってできないの?

【設例】 東京に住んでいた私の母に対して、私の知らない間に、成年後見が開始されていました。母の成年後見人として、東京の弁護士が選任されたそうです。ところが、母は、突然、私が住んでいる広島県の施設に入所したいと言い出しました。そのため、現在、…

お金2.0の感想

今、経済がかわろうとしている。これまでの資本中心の資本主義から,資本より広い概念である価値を軸とする価値社会へとシフトしていく。 社会は、その時々の技術レベルを前提として、人間の経済的事情・社会的観点によって変化する。これまで、「貨幣」が経…

新司法試験合格者が約10年ぶりに新司法試験の択一式を解いてみた

ここのところ風邪気味で,コロナウイルスの状況を踏まえると,土日に外に出るのは差し控えたい。そこで,ちょっと時間ができたので,Youtubeの「東大生が○○してみた」という企画みたいに,択一試験を解いてみようと思う(突然)。【新司法試験の択一式試験に…

感想ー自分の頭で考えて動く部下の育て方

キンドルアンリミテッドで見つけた本の感想を勝手に書いていくシリーズ。今回は,部下の育て方についていろいろ考えてみたい。自分は別に上司ではないが,将来は上司になる可能性があるし,それに部下の視点で見てみるのも面白いかと思い。 さて,部下の育て…

債権法改正~債権者代位権について

債権法改正における債権者代理権を,今更ながら復習してみよう。もともと債権者代位権は,現行法上,423条が1か条定めているだけのものであるにもかかわらず,判例によってさまざまなルールが設定されており,債権総則を学ぶ際にも大きなトピックの中の…

刑事裁判において,高等裁判所は地裁の無罪判決を証拠調べすることなく逆転有罪にできるか(最高裁令和2年1月23日判決)

【事案】地裁判決:窃盗1件,詐欺1件,詐欺未遂3件については有罪。その一方,家電量販店で不正な身分証明書を利用してクレジットカードを発行し,商品を購入したという詐欺事件については,犯人であるとする立証がないとして,無罪とした。 これに対し,…

婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚した場合における婚姻費用分担請求権の消滅の有無(最高裁令和2年1月23日決定)

【事案】平成30年5月 妻→夫 婚姻費用分担調停の申立て平成30年7月 妻・夫 離婚の調停が成立(財産分与の合意なし) 同日 妻・夫 婚姻費用分担調停について不成立→審判移行 ↓つまり,婚姻費用分担調停の申し立てがあったが,その結果が出ていない段階で…

はじめてのやせ筋トレの感想

今年に入ってから筋トレに目覚めている。ジムに通い、いろいろと試行錯誤する日々だが、初心者にとって意外とわかりにくいのが、「どうやって筋トレすればいいの?」というもの。ダンベルの群れの前で途方に暮れ、とりあえずYouTubeの動画を見様見真似してみ…

「何者」の感想

月2冊は専門書以外の書籍をを読もうということで、今月2冊目の本の感想。朝井リョウの「何者」。 読売新聞でおすすめされていたので、Kindleで購入。購入の動機は、就職活動に関する心の動きとかを見てみたかったから。 あらすじは、主人公が、友人らと一緒…

最近読んだの自己啓発系の本の特徴から考える法曹の使命

最近,YOUTUBEで便利な動画が上がっている。本のまとめシリーズだ。サラタメさんとかアバタローさんとか,いろいろな人が本の要点を簡潔に教えてくれる。 それを踏まえてもう少し知りたいなぁと思った時に,キンドルで本をその場で購入できる。便利な世の中…

THE TEAM 5つの法則の感想

今回は、チームの力をより強くするためにはどうすれば良いかということで、標記の本を読んでみた。 正直、私はチームワークが苦手だ。また、なぜ苦手なのかもよくわからない。現状、チームでの仕事をするときに、自分の立ち位置がよくわからなくなることがあ…

副本条項(Counterparts Clause)が分からないので調べてみた

英文契約書の中で、counterparts条項がある。いろいろな本を読んでも今ひとつ意味がわからなかったので、ノートにまとめておくことにする。 【サンプル条項】this agreement may be executed in one or more counterparts, each of which shall be deemed an…

法律についての説明の順序

いろいろと人に説明することが多いが、幸い、説明が上手だと褒めてもらえることはちょいちょいある。 そのため、法律の説明をする際に、ちょっと心掛けていることをメモしておく。 法律を理解するステップとしては、大まかに行って4段階あると思っている。 S…

仕事は楽しいかねを読んでみた

Kindleアンリミテッドにふと登録してみたところ、「仕事は楽しいかね」という本にでくわした。 まぁ、ランキングに載っていたくらいだから有名な本なんだろうが。その感想をば。この本のエッセンスを簡単にまとめると、「考える暇があればとりあえずやってみ…

メールの書き方のお勉強

仕事上、メールをすることは多いが、メールはどうも苦手だ。どうも後手後手に回ってしまう。 そこで、苦手意識を克服するためのワンステップとして、メールの書き方についての本を1冊(だけ)読んだので、概要だけまとめておく。 ポイント:メールのやり取り…

法の支配とは

法学を学ぶ人、そうでない人も含め、「法の支配」という言葉を聞いたことがある人は多いだろう。 みんな大好きWikipediaによれば、「法の支配(ほうのしはい、英語: rule of law)は、専断的な国家権力の支配を排し、権力を法で拘束するという英米法系の基本…

ポピュリズムの台頭

米国で中間選挙の結果がいよいよ明らかになろうとしている。最近の世界情勢をみていると、ポピュリズムが台頭してきたと感じる。ドイツでは難民排斥を掲げる政党が勢力を伸ばしているし、トランプ大統領も、移民排斥を訴えたり、メディアを執拗に攻撃し、い…

裁判官が持つべき感覚

読売新聞の記事で、大学も収益力を求められるようになっている、というものを見た。なんとなく、学問は経済分野から切り離されたところにあり、経済的合理性とは関係なく、じっくりと研究活動、思想活動に従事するものかと思っていたが、最近は、研究成果等…